■ 絆と証 ■

「ワンさん、たっだいまぁ〜!」
一番に店の扉を開けたのはハルカ。それに続いてアツヤとルカも入ってくる。
「はい、おかえりアル。問題なく出会えたみたいアルネ。」
「何が問題なく…だよ、ワンさん。大司教が出てくるなんて…腰が抜けそうになったぜ。」
アツヤの非難の声にワンはまるで悪戯が成功した子供のような無邪気な笑みを見せた。
「フフフ…だから訳有りって言ったアルヨ。…久しぶりアルネ、ルカ。」
「ワンさま。お久しぶりでございます。」
ルカの挨拶にワンはさっきとは違う純粋な笑顔で応える。しかし、大いなる悪の力を感じ、旅立つことを決めたルカのこれからを考えると居た堪れない気持ちになる。人よりも大きな力を持ってる者は遠い存在として扱われる。時には迫害され、恐れられ…それはワン自身も感じてきたこと。
「…で、アツヤ達はパーティーを組む事になったのカ?」
ワンは問いかける。
一抹の不安は拭い切れない。
この2人も恐れを抱くかもしれない。
しかし…
「あぁ。俺達は一緒に旅をするぜ。それぞれの目的もあるが…共に力を合わせる仲間だ。」
その言葉にワンは救われる。
自分の目は正しかった。いや、この2人の目が正しかったのだ。
ひとさじの不安でも抱いた自分がワンは恥ずかしくなった。
「…そうアルカ。おめでとうアル!紹介したかいがあったアルヨ☆」
「こっちこそ礼を言うよ、ワンさん。いい仲間ができた…ありがとう。」
そう言いながらアツヤは手を差し出す。ワンは迷いもなくその手を握り、ぶんぶんと大きく振った。
いててて、とアツヤ。
あははは、とハルカ。
ふふふふ、とルカ。
仲間がいるというのはやっぱりいいものだ。
ワンは躍る心の中でそう思った。
 
「でさ、ワンさん。ミー達3人になったから登録しようと思って戻ってきたんだよ。」
なるほど、とうなずくワン。
「じゃあ、受け付けるアルヨ。この登録用紙に今いる人の名前を書くアル。」
ワンはそう言って紙を渡すと店の奥に入っていった。その間に紙を回して名前を書く。
書き終わった頃にワンは戻ってきて、一つの緑色の宝石を三人の前に置く。
大きさは手のひらに収まるほどだ。
「書き終わったアルネ。じゃあ、パーティーマスターを決めるアルヨ。」
「パーティーマスターって??」
ハルカは指で宝石をつつきながら問いかける。
「まぁ、代表者みたいなものアル。責任者でも可、アル。」
ふぅ〜んと唸りながら宝石を手に取り、しげしげと眺める。
「それならあっちゃんでいいんじゃない?」
「そうですわね。それでよろしいかと思います。」
「そうか…んじゃ、ワンさん。俺がやるよ。」
アツヤが手を出すとその手に宝石が渡される。
「それじゃ、それを持ってちょっと離れるアルヨ。やり方は知ってるアルカ?。」
あぁ、と手を上げてアツヤは少し離れる。目を閉じて意識を集中すると輝きを放ち、宝石が魔力を帯び始める。
「…契約に基づき、我をマスターとする。我が名、アツヤをその身に刻め!」
一瞬の大きな閃光。
そして宝石に吸い込まれるようにして光は消える。
ふぅ、と息を付いてからワンに宝石を渡す。
「OKアル。後はこれにはめ込んで…出来上がりアル〜。」
ちょうど懐中時計のようにも見える金色の証。
酒場で登録したパーティーのマスター全員が持っているものだ。
これは仲間の誓いを立てた者の名前が刻まれてる。
アツヤ、ハルカ、ルカ…
中央にはさっきの緑色の宝石。
「じゃ、これはアツヤに渡すネ。そうそう、これ以降は新たに仲間を入れたい場合は酒場に登録しに来なくてもその証でできるアル。」
「へぇ〜、便利だねぇ。にしても、いいな、あっちゃんいいなぁ。」
「お前がマスターは俺でいいって言ったんだろうが。」
そう言いながらアツヤは腰に証を付ける。
そして、手にとってじっと見つめる。
「…これは最も意味あるもの…そして、最も意味を成さないもの…か。」
「???何を言ってるの??あっちゃん??」
「とある冒険者の有名な言葉さ。仲間との絆を表すこの証は最も重要なものだが、それと同時に、表さなければ繋がっていられない絆は意味を成さない。要するに、絆は形に縛られるものではない。これはあくまで具現化されているものであるだけであって、仲間全員がそれぞれ心に絆という証を持っているって事だな。」
「おぉ〜!かっこいい〜!!」
「そうですわね。私達はみんな心で繋がっていかねばなりません。」
「あぁ。…これからだ、これからが本当の旅の始まりだ。」

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