■ 光の導き ■

 世界の教会の中心、ナーオス大教会。多くの人々が信仰の為に遠方からも訪れる。
「…今日も世界に祝福あれ…。」
 一般の大聖堂とは別に作られた小さな祭壇。
ステンドグラスから漏れる煌めく光の中、その祭壇に祈りを捧げるものがいた。
「ルカ…またここにいたのですね。」
 背後から聞こえた穏やかな声に静かに振り返るとそこには神々しくもある姿の男がいた。
「あっ、大司教様。おはようございます。」
 軽く頭を下げながらルカは言う。
「おはよう。…誰もいない時くらいは大司教はやめませんか?」
 大司教というには若く、長身の男は穏やかな笑顔を浮かべながら問いかける。
「そんな…恐れ多いですわ。いくら私の叔父様とはいえ、教会を治める方なのですから。」
 ルカもまた穏やかに笑いかける。その笑顔に少し照れ臭そうにルカの顔を見返す。
「それでも2人の時はあなたの叔父でありたいのですよ、ルカ…。お願いしますよ。」
「…わかりましたわ、クリウス叔父様。」
 ルカが少し考えてから答えた言葉。その言葉にクリウスは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「ありがとう。ところでこの頃、熱心に祭壇に訪れていますが…何かありましたか?」
 クリウスのその言葉にルカは少し、顔を曇らせる。
「実は…」
 ルカは自身が感じていることをクリウスに話した。世界に邪悪なものを感じること、それと共に毎晩、世界が闇に包まれる悪夢を見ること、しかしそんな世界に小さく、かすかな力強い光がいくつも見えること、その中に自分がいること…。クリウスは顔色を変えず、
しかし話が終わった時に何かを悟ったように目を閉じ、静かに話し始めた。
「…ルカ、私がいつも話していた宝玉の話、覚えていますね?」
「はい…幼い頃から聞き続けていますもの。忘れませんわ。」
クリウスは静かに立ち上がりながら祭壇に向かった。
「そうですか。では、話は早いですね。」
 そういうと静かに祭壇に手をかざしながら静かに呪文を唱えた。すると一瞬の輝きを放ち、全ての光がクリウスの手元に集まる。
「それは…?」
ルカは問いかける。クリウスは静かに光をルカに差し出しながら言う。
「あなたもそろそろ世界を見てきなさい。あなたを教会に属するものではなくプリーテスにしたのも全てはそのためなのです。」
 光は少しずつ消え、手元にはクロスボウが残った。
「聖武器、『セイレーン』です。あなたの旅の助けとなるでしょう。」
 戸惑うルカにクリウスは優しく話しかける。
「怖がることはありません。あなたの感じたことや夢は決して幻ではないのです。だから世界を回り、考えるのです。」
「でも…なぜ私が…。」
「…人はそれぞれ、役目を持って生まれてくるのですよ。しかしそれは強制ではないはずです。だからあなたは考えればいいのですよ。旅の途中には必ずやあなたが夢で見た光達が助けてくれるはずです。人々との出会いがあなたに様々なものをもたらすでしょう。」
 ルカはしばらくの沈黙の後、静かに祭壇に祈りを捧げる。
「…叔父様…行ってまいります。」
 ルカは決心し、立ち上がる。
「あなたに精霊キャンドの加護を…。」
 その言葉と共にルカの旅が始まった。光はルカを導くかのように道を輝かせていた。

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