■ ケミ・ヒストリー ■

白い霧の中、出会った2人は偶然ではなく運命だったのかもしれない。
「まぁ〜…しゃーないか〜。わいが立派に育てたろ。」
『マイカ』それが残された赤ん坊の一つの情報だった。
 
 
「マスター!!マスター!!」
フライパンを片手にマイカは部屋の戸を開ける。
「もぅ!!いつまで寝てるんですか?!とっくに朝ごはんできてるんですけど!!」
マイカの言葉の先にはベッドにうずくまる物体、いや人物が一人。
「ん〜…もうちっと寝かしてくれや〜…。」
もぞもぞと頭を出した男は拝むように手を合わすと再び眠りに入る。
「まったく…錬金術の世界にこの人ありと謳われたブランシュとは思えないわね。」
マイカはそっと近づき、フライパンを振り上げる。
「起きてください!!」
しかし、振り下ろした瞬間、フライパンはマイカの手から消え去っていた。
「…かなんな〜。そんなんで叩かれたらごっつ〜痛いやん。」
ブランシュは頭を掻きながらやれやれと起き上がる。
「ほい。これは料理するもんやで。さてメシ食うか♪」
マイカの手の中にあったはずのフライパンを手渡す。
「…なるほど。原子レベルで分解した後、再構築したわけね…。」
マイカは興味深そうにしげしげとフライパンを眺めていた。
 
「さぁて、メシも食ったし…今日も訓練するか〜。」
首をコキコキしながら立ち上がるブランシュ。しかし今日のマイカは違っていた。
「マスター、お話があります。」
「なんや、改まって…」
いつに無く真剣なマイカにブランシュも椅子に腰掛ける。
「この間、ルイムが旅に出てるのを聞いたんです。私もそろそろ自分の力を試してみたいんです。」
「いきなりなんやな、やぶからぼうに…」
ブランシュは目は見開いた。
「マスター、あなたは私の育ての親、言わば命の恩人です。感謝してます…しかしそれ以上に万物の支配者の称号を持つ偉大な錬金術師としての尊敬の念が大きいのです。」
「…。」
無言のまま聞き続けるブランシュ。マイカは今、錬金術師なら誰もが知っている偉大な称号を持つものに対しての挑戦をしているのだ。
「目標はいつだってマスターでした。けど、今は違うんです。一人の術師としてあなたを超えたいんです。」
マイカがそう言うとブランシュは静かにテーブルに一つの指輪を置いた。
「…これは?」
「『古の指輪』。まっ、古代アイテムの一つやな。簡単な精製や錬成は行程をすっとばしてできる優れものや。餞別代わりにやるわ。」
「マスター…。」
「お前やったらいつかそう言うってわかっとったからな〜。行ったらええ。その代わり…諦めんなよ?」
ブランシュはそう言うと立ち上がった。が、忘れていたかのように付け加える。
「あっと、ちょい待った。お前一人やと色々、大変やろうから仲間と旅せえ。」
マイカは不思議に思いながらうなずく。
「そうですね…じゃあ、近くの町の酒場へ…」
「いや、そのうち来よるから待っとけ。」
「???」
 
ブランシュの不可解な言葉がばらばらにのびていた線を交わらせることになる。

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