■ 予感 ■

「…くっそ〜、カインのおっさんのやつやりすぎだ!」
アツヤはボロボロになりながら自室のベッドになだれ込む。最近の訓練は特に厳しく、毎日この調子である。
「しかも馬鹿みたいに強えし…だめだ…思い出したらうなされる…。」
そう言いながらベッドの傍のサイドデスクにおいてある瓶に手を伸ばす。中には深めの赤い…一見すると血にも見える液体。
「…やっぱり、酒はかかせねぇな!」
瓶を口元に当て、中身を何度も飲む。次第に顔も赤みを帯びてくる。苦しい訓練もなんのその、少し酔いが回り機嫌よく飲んでいたときにふと思い出す顔。
「…あいつ、今は何処にいるんだろうな〜。」
黒い装束を身に纏い、『ミー』と自称するあいつ。会ったのは一回程だったが、歳も近く、似たような環境であった二人はすぐに意気投合し親友となった。
「よし!気分がいいから街の酒場に行ってやる!」
アツヤは部屋を密かに抜け出した。何度か抜け出しているので見張りや抜け道の場所は熟知している。すぐに人で賑わっている酒場についた。
「お〜、アツヤ。今日も脱走かぁ?ばれたらカインにとっちめられるぞ?」
マスターが冗談交じりに言う。
「だ〜いじょうぶだって!俺がそんなヘマするわけないだろ!」
酒場独特の雰囲気も手伝い、どんどん酒を飲むアツヤ。
「よし!!今日はとことん飲むぞ〜!!」
 
その夜は暗かった。空も暗闇も妙に黒く、星々の光や月光はついに輝くことはなかった。闇が街を覆い隠し、侵食するように広がる。
ハルカのことを思い出したのも何かの前触れだったのかもしれない。
長いようで短い夜が明ける。闇に侵食された城は『何か』が変わってしまっていた。戸惑いと疑惑の中、アツヤは思いも寄らぬ形でハルカと会うこととなるのだった。

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